2026.2.3
プリントの冒険へ〜布に物語を宿す旅〜
均一で正確なプリントは、すでに世にあふれています。しかし、それだけでは“味”や“奥行き”は生まれません。
立体感、触感、経年変化、光の表情・・・
加工技法の選び方によって、同じデザインでも仕上がりの印象は大きく変わります。今回は、製品へのプリント加工技術を、技法ごとに分かりやすくご紹介します。
プロローグ:始まりは一件の依頼から
ある日、KOWAに一件の依頼が舞い込みました。
求められたのは、「人の手で押したような、味のあるプリント」。機械によるプリントは、再現性が高く、均一な仕上がりが得られます。一方で、整いすぎた印象になってしまうことも少なくありません。一枚ごとに異なるニュアンスを“味”として成立させるには、一つの技法に頼るのではなく、それぞれの特性を理解し、適切に選ぶことが重要になります。ここからは、製品へのプリント加工で使われる主な技法を順に見ていきましょう。
第一章:王道のシルクスクリーンプリント
Tシャツやスウェットなど、製品への二次加工において幅広く採用されている、王道のプリント方法です。このシルクスクリーンプリントをベースに、使用するインクや加工方法を変えることで、表現の幅はさらに広がります。
ラバープリント
ゴム系インクを使い、輪郭をはっきりと表現できるプリントです。
- ロゴや文字がくっきり見える
- メッセージ性を強く出せる
発泡プリント
熱処理によってインクが膨らみ、立体感が生まれます。
- 見た目と触感に変化が出る
- ロゴやモチーフの存在感を強調
- 平面デザインに動きを出したい場合に有効
クラッキングプリント
乾燥や伸縮によって、意図的にひび割れを生じさせる技法です。
- 経年変化を表現として取り込める
- 古着・ヴィンテージテイスト向き
- 新品でも奥行きのある印象になる
フロッキープリント
繊維状のパイルを付着させ、起毛感を出すプリントです。
- 独特の触り心地
- 上品で落ち着いた印象
- 視覚より質感を重視するデザインに適している
箔(ホイル)プリント
金属調のフィルムを熱圧着するプリントです。
- 光沢による強いアクセント
- 高級感やアート性、華やかさをプラス
ラメプリント
ラメ粒子を含んだインクを使い、装飾性を高めるプリントです。
- 動きに合わせて表情が変わる
- 摩擦による落ちやすさには注意が必要
編集部からひと言
2000年前後、ギャルブームとクラブカルチャーの熱気とともに一世を風靡した手法。華やかさと楽しさを前面に押し出す一方で、摩擦によってラメが落ちやすいので床にキラキラが散らばる……そんなエピソードも。
オイルプリント
光沢やムラをあえて残し、均一でない表情を楽しむプリントです。
- 一点ごとに表情が異なる
- モード系や個性を重視するデザイン向き
編集部からひと言
2000年代後半、箔プリントの進化版として人気が出た手法。均一に仕上がらないムラや光沢を個性と捉える、モード系のブランドで多用されました。
第二章:デジタルと新しいプリント技法
版を使用せず、データから直接プリントできるデジタル系の技法です。スピード感があり、小ロットや多色表現に対応しやすい点が特徴です。
インクジェットプリント(DTG:Direct to Garment)
製品に直接インクを吹き付けてプリントする方法
- 細かな柄やグラデーション表現が可能
- 小ロット・短納期案件に向いている
- コットンや風合い重視向き
第三章:実務を支える転写プリント
製品づくりの現場では、表現性だけでなく、スピード感や数量対応といった実務面での条件も重要になります。ここでは、日常的な生産業務を支える転写プリント技法をご紹介します。
熱転写プリント(シート)
印刷またはカッティングしたシートを熱圧着します。
- グッズ制作向き
- 小ロット・短納期案件に向いている
編集部からひと言
1990〜2000年代、写真表現を手軽に実現する方法として普及しました。古着屋さんでよく見かける、プリント部分がひび割れているTシャツはこちら。
昇華転写プリント
昇華インクを繊維に染着させるプリントです。
- 生地と一体化した仕上がり
- 軽く、硬さが出にくい
- ポリエステル製品に最適
第四章:風合い・表情を重視したプリント
ここからは、見た目だけでなく、素材感や風合いを重視したプリント技法をご紹介します。
染み込みプリント
インクを繊維の奥まで浸透させます。
- 古着のような柔らかな風合い
- 色ムラが一点ごとに異なり味のある表情が出せる
- 着心地を損ないにくい
ラバープリントと同じ版でもマットな印象に・・・
リフレクター・反射プリント
暗所で発光、または光を反射する機能性プリントです。
- 視認性・安全性の向上
- イベントやユニフォーム用途
和紙プリント
和紙素材を用いて、表面感を演出する加工です。
- かすれや揺らぎが特徴
- ナチュラルで上品な印象
第五章:必殺技は、組み合わせから生まれる
表現は、一つの技法だけでは完成しません。異なる個性を掛け合わせることで、表現はより豊かになります。
- ラバー × 箔
- フロック × ヴィンテージ
- 発泡 × インクジェット
- プリント × 刺繍
私たち製品チームの役割は、この組み合わせを設計することです。一つひとつの選択が、“ただの服”から“語れる一枚”へと変えていきます。
こちらは発泡×クラッキングプリント!
エピローグ:加工を知ることは、表現を広げること
それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることで、製品の印象や価値は大きく変わります。
「何を表現したいか」から逆算して、最適な加工を組み立てる。
その積み重ねが、“語れる一枚”を生み出します。プリントという冒険の旅を、私たちはこれからも続けていきます。